投稿日:2020年09月03日
家を買うときに必要な住宅ローンは、夫婦二人の名義で組むことも可能です。ただし、ローンを二人で組む方法には、「ペアローン」「連帯保証型」「連帯債務型」といった種類があり、それぞれメリットやデメリットが違います。
どの方法でローンを組むかによって、返済の負担や万が一の保証の手厚さも変わってくるので、各方法の中身について知っておく必要があります。
今回は、ペアローン、連帯保証型、連帯債務型それぞれの特徴について解説します。
ペアローンとは、夫婦がそれぞれローン審査に申し込み、二人で借りたお金の合計額で家を買うというスタイルの住宅ローンです。たとえば、新居の予算が4,500万円で、夫一人の収入では最大3,500万円までしか借りられない場合、残りの1,000万円を妻が自分の名義で借り入れます。消費者金融やマイカーローンといった一般的な個人ローンとは異なり、「夫婦がお互いの連帯保証人になる」ところがペアローンの大きな特徴です。
住宅ローンを2本組む必要があるので、手数料も倍かかってしまいますが、ペアローンを利用すれば夫婦どちらかの収入だけでは手の届かない不動産も購入することができます。また、それぞれ個別にローンを組む関係上、夫婦の両方が住宅ローン減税を利用可能です。
連帯保証型とは、夫婦の片方を連帯保証人として立てることで、個人では組めない金額を借りる住宅ローンの組み方のことです。
一般的に、住宅ローンの借入額は申込者の収入や職業、勤続年数等の属性によって決まります。
個人で組める住宅ローンの上限額は、どれだけ高くても年収の10倍程度。現実的に無理なく返済できる金額を考えると、年収の5倍程度が限界です。本来であれば、年収が上がらない限り、住宅ローンの借り入れ上限額が上がることはありません。
しかし、連帯保証人、つまり万が一返済ができなかったとき、代わりにローンを背負ってくれる人がいれば、自分一人の信用力では審査に通らない額のローンも組めるようになります。
なお、連帯保証型の住宅ローンは、あくまでもローンの契約者は一人だけです。連帯保証人になった側は、住宅ローン減税を利用することができません。
連帯債務型は、夫婦二人でお金を借り、夫婦二人でお金を返していくという住宅ローンの組み方です。たとえば、4,500万円の住宅ローンを連帯債務型で組むと、夫と妻の二人で4,500万円を返済していくことになります。
ただし、連帯債務型の住宅ローンは、取り扱っている金融機関の数がそれほど多くはありません。特に、銀行系の住宅ローンでは連帯債務型に対応していないケースもあります。連帯債務型の住宅ローンを利用したくても、気になる金融機関が対応していなければ、金融機関やローンの借り方を考え直す必要があるので、注意が必要です。
ちなみに、連帯債務型のローンは、夫婦ふたりとも住宅ローン減税を受けられます。
夫または妻が一人で住宅ローンを組むのが、単独名義です。単独名義の住宅ローンは、ローンの契約者が亡くなった場合、団体信用生命保険の保険金でローンの残債を完済できるため、万が一のことがあっても家族に家を残すことができます。残される家族はローンとは無関係なので、家族に住宅ローンの返済負担がかかることはありません。
ただし、一人の収入で融資額が決まってしまうので、高額なローンを組むのが難しいという問題があります。
夫婦がそれぞれ1本ずつ自分の収入に合わせた住宅ローンを組むペアローンは、単独名義よりも大きなローンを組める方法の一つです。夫婦のローンは別契約なので、夫も妻も両方が団体信用生命保険に加入できますし、住宅ローン減税も受けられます。
ただ、ローンを2回組むことになるため、ローンの申込時に必要な保証料や手数料が倍かかりますし、安定収入がないと審査に通らないため、あくまでも共働きが前提です。病気や事故、子育て等で働けなくなっても、ローンの返済は迫ってきますし、仕事を辞めると住宅ローン減税を利用できなくなってしまいます。
また、団信の補償範囲は、「自分の住宅ローン残債」です。夫が3,500万円、妻が1,000万円のローンを組んでいる状態で夫が亡くなった場合、保険金で夫側のローンは完済できますが、妻側のローンは全額残ってしまいます。
連帯保証型住宅ローンのメリットは、単独名義より多くの額を借りられること。また、ペアローンと違ってローン契約が1本なので、手数料も抑えられることです。
ただし、連帯保証型の場合、連帯保証人は住宅ローン控除を利用できません。連帯保証人も働いていて、夫婦の収入からローンを返済している場合、所得税と住民税の節税効果が小さくなってしまいます。団信に加入できるのもローン契約者だけなので、保証人側が亡くなったり働けなくなったりした場合、返済の負担が一気に増えてしまうのもデメリットです。
夫婦ふたりでローンを背負う連帯債務型住宅ローンには、
・単独名義よりも高額なローンを組める
・手数料は1本分で良い
・金融機関を選べば二人とも団信に入って住宅ローン控除を受けられる
というメリットがあります。
しかし、そもそも連帯債務型、それも契約者の両方が団信に加入できる金融機関は選択肢が少ないです。そのほかのローンに比べると、金融機関選びの自由度は下がってしまいます。
ペアローンや連帯債務型の住宅ローンは、「夫婦二人で家を所有」する手続きです。ただ、不動産の所有権(持分)と実際に返済をしている人の負担率が違うと、「負担の大きい側から負担の少ない側に対した贈与が行われた」とみなされる場合があります。
たとえば、4,500万円の内3,500万円を夫が、残る1,000万円を妻が負担するペアローンを組んだ場合、夫婦のローン負担率は夫77%、妻23%です。この状態で、不動産を夫婦がそれぞれ50%ずつ所有するという内容の登記を行うと、妻側はお金を払っていないのに、17%もの資産を得たことになってしまいます。たとえ夫婦間であっても、多額の金銭や資産をやり取りすれば、贈与税の課税対象です。また、夫婦が離婚することになったとき、お金の精算をせずにマイホームの持分を相手に譲るといったケースでも、場合によっては贈与になります。
こういった税のトラブルを防ぐために、夫婦でローンを組むときは、ローンの負担割合と持分の割合を合わせておくことが大切です。
本人の収入を審査されるペアローンはもちろん、連帯保証・連帯債務型の住宅ローンも、夫婦それぞれの年収や返済能力が審査の対象になります。当然、連帯保証人や連帯債務者に何らかの問題があると、ローン審査には通りません。
夫婦のどちらかが過去に自己破産等の債務整理をしていたり、クレジットカードや携帯端末の分割払いを滞納していたり、すでに収入から借りられる限度額近くまでお金を借りていたりすると、住宅ローンを借りづらくなるので注意が必要です。
住宅ローン減税とは、毎年の年末時点で残っている住宅ローン残債の1%が、最大10年間(一部期間中に家を買った場合は13年間)翌年の所得税と住民税から戻ってくるというお得な減税制度のこと。ただし、住宅ローン減税による還付金は、10年間で最大400万円、毎年40万円が上限です。4,000万円を越える住宅ローンを組んでいると、節税効果が弱まってしまうので、高額なローンを組む場合はペアローン等を使ってふたりで住宅ローン減税を受けましょう。
借入額が4,000万円以下でも、ローンをふたりで組んで住宅ローン減税を利用した方がお得になるケースは少なくありません。夫婦でローンを組むときは、住宅ローン減税を活かせるように負担率を調整しましょう。
ペアローンは、
・単独名義では新居の必要額に届かない
・4,000万円以上の住宅ローンを組む予定がある
・住宅ローンを組んでから少なくとも10年以上は共働きする
といった人におすすめの住宅ローンです。
住宅ローン減税の節税効果を最大限に受けつつ、高額なローンを組むことができます。
連帯保証人型の住宅ローンに向いているのは、
・単独名義よりも高いローンを組みたい
・万が一のことがあった場合は団信で家族に家を残したい
・連帯保証人がパート等で働いているため収入が安定していない
という人です。
連帯保証人を立てることで多めに融資を受けられますし、万が一のことがあっても団信の保険金でローン残債をカバーできます。連帯保証人がパートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用で、ペアローンや連帯債務型を利用できない場合でも、住宅ローンを組めるのがポイントです。
連帯債務型は、
・単独名義より高額なローンを利用したい
・手数料と最小限に抑えたい
・将来的に夫婦の片方が仕事を辞める予定がある
という人に向いています。
ローンをふたりで返済していく連帯債務型は住宅ローン減税も利用できますし、夫婦で協力すれば、どちらか一方が仕事を辞めたときのリスクも低いです。
ただし、利用できる金融機関が限られるので、金融機関の吟味が必要になってきます。
夫婦の収入や返済能力を合わせれば、一人では借りられない高額な住宅ローンも利用可能です。ただし、一口に夫婦でローンを組むといっても、ペアローン・連帯保証型・連帯債務型のどれを選ぶかで返済の負担や将来的なリスクが変わってきます。ご家庭によって一番お得なローンの利用法は違うので、どの方法が良いか迷ったときは、ぜひ一度、弊社にご相談ください。