投稿日:2020年09月03日
金融機関のホームページを見ると、実に多くの住宅ローン商品が提供されています。金利もさまざまですし、借入先も千差万別。どれを選ぼうか迷われている方も多いのではないでしょうか。
ただ、これだけ多くの商品が出ているのですから、「自分に適したタイプの住宅ローンが必ずある」ともいえます。それぞれの特長をしっかり見極めて、メリットの大きい住宅ローンを選ぶことが大切です。
ここでは金利タイプと借入先について、最適な住宅ローンを選ぶうえで知っておきたいポイントをまとめました。
住宅ローンを選ぶとき、気になる項目の一つに「金利」があるでしょう。金利は、金融機関によっても異なりますし、同じ銀行でもタイプの異なる複数の商品でも違います。トータルの返済額や月々の支払額にも大きな影響を与えますから、慎重に選びたいものです。
金利タイプを大きく分けると、「全期間固定金利」「変動金利」「固定期間選択」という三つがあります。それぞれの特徴から、住宅ローン選びのポイントを紹介しましょう。
全期間固定金利タイプとは、契約時に決められた金利が完済まで固定されているタイプの住宅ローンです。フラット35のように全期間同じ金利のタイプもあれば、10年や20年など固定期間があって、その後更新する「段階金利タイプ」の商品もあります。なお、段階金利タイプも借入時に更新後の金利が決められます。
このため、市場の金利が上昇してもトータルの返済額が変わらないという点が、全期間固定金利タイプの大きな特徴です。月々の支払額も契約時に決まりますから、返済計画が立てやすいのもメリットといえるでしょう。
なお、金利は他の商品より高めに設定されています。今の低金利が完済まで続くと仮定した場合、トータルの返済額が最も大きくなるタイプでもあります。
「金利上昇による返済額アップを避けたい」「収入の変動が大きい」という方は、全期間固定金利タイプがおすすめです。
変動金利タイプとは、市場金利に合わせて住宅ローンの金利も変動するタイプの商品です。ここで紹介する三つのタイプのなかでは、契約時の金利が最も低く、完済まで今の低金利が続けば返済額を最も抑えられるタイプでもあります。
市場金利は日々変動しますが、それがリアルタイムで住宅ローンの金利に反映されるわけではありません。一般的には、5年ごとに返済額が見直されます。その際も、残債を改定前の1.25倍以内にするというルールがあります。たとえば、毎月8万円の返済をしている人なら、たとえ市場金利が2倍、3倍にアップしても、毎月10万円までしかアップしないよう定められています。
とはいえ、金利上昇リスクは避けられませんから、返済額が増加する可能性もあります。返済額がアップしても家計に影響を受けないくらい収入を得ている人や、借入額が少ない人などに向いているでしょう。
固定期間選択タイプとは、契約時から一定期間は固定金利で、その後は固定金利か変動金利かを選べるタイプの住宅ローンです。固定金利の期間は、2年、5年、10年など契約者が選べます。将来の金利を予測しながら検討することがポイントとなるでしょう。
なお、固定期間中の金利は期間が短いほど低くなる傾向にあり、全期間固定金利タイプと比べてトータルの返済額を抑えることも可能です。
ただし、固定金利期間が終了して再び固定金利を選ぶ際は、その時点の金利が適用されます。金利が上昇していれば、返済額がアップする可能性もあるので、注意が必要です。
また、変動金利を選ぶ際には、改定前の1.25倍以内にするというルールが適用されないため、金利が大幅に上昇した際には返済額が膨らむ場合もあります。
繰り上げ返済で総返済額を抑えるという手もありますので、繰り上げ返済の当てがある人
は検討してはいかがでしょうか。
住宅ローン商品を扱っている金融機関は実にたくさんあり、扱っていないところの方が少ないといっても過言ではないでしょう。
その中から、返済額をできるだけ抑えられる金融機関を選ぶには、どのような点に着目すれば良いのか、比較する際に役立つポイントをいくつか紹介しましょう。
一つ目のポイントは、事務手数料や保証料などの諸費用です。
住宅ローンを選ぶ際は、どうしても金利を見て選びがちですが、金利の低い金融機関には契約時の手数料が高かったり保証料がかかったりして、トータルの費用が高くなるケースもあります。
たとえば、融資時に支払う事務手数料。借入額(元金)を問わず3万円など一定のところもあれば、借入額の2%と決めているところもあります。仮に借入額が3,000万円だとすれば、ある銀行の事務手数料は3万円でも、別の銀行だと60万円以上になるのです。
また、保証料についても必要な金融機関もあれば、0円のところもあります。同じ銀行でも、窓口対応だと必要で、ネットからの申し込むなら不要というケースもあります。
繰り上げ返済を検討されている方であれば、その手数料も借入先選びのポイントの一つになるでしょう。
フラット35のように繰り上げ返済を何度おこなっても手数料は無料という住宅ローンもあれば、1回あたり1~5万円ほどの手数料がかかるところもあります。総支払額にも影響を与えますから、できれば無料のところを選びましょう。
住宅ローンの契約者は、原則として団体信用生命保険(団信)の加入が必要です。この保険は、返済期間中に契約者に万が一のことがあった場合、残債を保険金で返済するというものです。
なお、一部の商品には死亡保障だけでなく、オプションが利用できるタイプもあります。たとえば、「3大疾病保障」のオプションがある保険だと、ガンや脳卒中などの治療で収入がなくなった際に一定期間の返済を保険金で支払うという内容です。
低金利で差別化が難しい金融機関では、こうした保険商品に注力しているところもあるようです。
住宅ローンを提供する銀行は、「メガバンク」「地方銀行」「ネットバンク」などにわけられます。金利やサービス内容などの面でそれぞれに特徴がありますから、金融機関選びの参考になるでしょう。
■メガバンク
・地方銀行よりも金利を低く設定しているところが多い
・団信のオプションなど、サービスが充実している
・ローン審査が厳しい傾向にある
■地方銀行
・メガバンクより審査が厳しくない
・土地代や契約金をその都度、決済してくれるなど、柔軟に対応してくれる
・金利や手数料はやや高めの傾向にある
■ネットバンク
・業界で最も金利を低く設定している
・対面での相談ができず、柔軟な対応ができないところが多い
・審査は厳しい傾向にある
こうした特徴から、自分が借り入れしやすいタイプの銀行を選ぶのも一手です。
住宅ローンを提供しているのは、銀行などの民間金融機関だけではありません。
代表的な商品として、独立行政法人の住宅金融支援機構が提供する「フラット35」や「財形住宅融資」があります。
フラット35とは、住宅金融支援機構と金融機関が共同で提供する住宅ローンです。全期間固定金利のため、返済額がアップする心配もなく、返済計画が立てやすいことが特徴の一つ。また、審査も民間金融機関と比べて厳しくないため、自営業や勤続年数が短い人などに人気があります。
一方の財形住宅融資とは、企業が福利厚生の一環で提供している住宅ローンです。住宅購入を目的とした財形貯蓄を1年以上続け、かつ財形貯蓄残高が50万円以上ある人が融資を受けられます。借入可能額は、貯蓄残高の10倍までで上限は4,000万円と、金融機関の住宅ローンより少なく、少額の借り入れを検討されている方には向いています。なお、勤務先に財形貯蓄制度がなければ利用できません。
一般的な住宅ローンは、一つの物件に対して契約者は一人ですが、契約者が複数でも借り入れできる住宅ローンもあります。ペアローンや収入合算タイプ(単独ローン)などが、代表的な商品です。
特に、共働きの夫婦に利用されるケースが多く、収入をあわせることで借入可能額を増やせるといったメリットがあります。ただし、デメリットもあるので、利用を検討されている方は注意点を把握したうえで決めましょう。
ペアローンとは、夫婦で別々の住宅ローンを契約して利用する住宅ローンです。
借入可能額を増やせるほか、夫婦それぞれで住宅ローン控除を受けられるため、節税効果も大きいという特徴があります。もちろん、団体信用生命保険も二人とも加入できます。
ペアローンを利用する注意点の一つが、夫婦で別契約ですから事務手数料などの諸費用は
通常の住宅ローンの2倍かかること。また、妻が産休などで無収入になっても返済額は変わらず、家計負担が一時的に増えるリスクもあります。
契約者は一人で、連帯保証人となった親族の収入を合算できる住宅ローンです。共働きの夫婦なら、夫が契約者で妻を連帯保証人とすることで、借入可能額を増やせます。
ペアローンと同じように見えますが、契約者は一人(1契約)のため、諸費用はペアローンよりも抑えられます。
なお、契約者が何らかの事情で返済できなくなった場合、連帯保証人に返済義務が生じます。連帯保証人には住宅ローン控除が適用されず、また団体信用生命保険への加入もできないという点も注意が必要です。
住宅ローンは、商品ごとに審査条件や金利が異なりますし、手数料や保証料といった諸費用も違います。どの銀行が良いとか、どの商品がおすすめというのは、契約者のライフスタイルや家計状況などの諸条件によっても異なるため、一概にはいえません。
不動産会社や施工会社が勧める提携住宅ローンが自分に適しているともいえませんので、自分で探し、さまざまな観点から総合的に判断して選ぶことが大切です。